実家

父の訃報から七時間後、わたしの実家がある町に着くと、駅にいとこが車で迎えに来てくれていました。いとこは少し気まずそうにしていました。見慣れた実家に着くと、たくさんの車が停まっていて、玄関に、見慣れない忌中の札がかかっています。ドアを開けると、母が眉を下げて出てきます。母の顔を見た時、わたしは微笑みました。安心したのです。一番近い人に会えた事に。

わたしが居間に入ると、たくさんの親戚縁者がいて、それまでの話し声がピタリと止み、張り詰めた空気に変わったのがわかりました。

皆、目のやり場に困り下を向き、誰もわたしと目を合わせてくれません。

奥の畳の部屋が、全く面影がない白黒の部屋になってしまっていて、たくさんの花に囲まれ、父が布団に寝ています。

父の頭の上に座り、顔の上にかかる布を取ります。寝ているような顔でした。

わたしは泣きませんでした。数分見て布をかぶせ、親族に向かい、遅くなりましたと挨拶をしました。

その町は、通夜の前に火葬する風習があります。なので、その前にたくさんの人たちが会いにきてくれました。狭い居間に何人人がいたたのだろう。次に人が来ます。

そのたびに、母が崩れ落ちて泣き叫びます。

わたしはその姿に、すっかりしらけてしまいました。

母親が泣く姿は、子供は悲しいものです。わたしはそれを嫌というほど分かるので、父が死んでも、子供の前で泣かない事ができるという事を母に見せたかった。

わたしはあんたとは違うんだよ。子供の為に泣く事を我慢するんだよ。いたって冷静な、いつもと同じ、笑顔のわたしで子供に接しました。

その姿を母に見せたかった。

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